【知られざる鳥取】投入堂への行場道で「六根清浄」を果たせ!

三徳山参詣のメインルートは、三朝温泉を経由し三徳山に入山する道。「六根清浄と六感治癒の地」として三徳山(六根清浄)と三朝温泉(六感治癒)はセットになっていたのです。三徳山では修行により、目・耳・鼻・舌・身・意を清める「六根清浄」が果たされるワケですが、意外にも山中の諸堂が役割を分担しているのです!

投入堂を目指す行場道は実は「六根清浄の道」!

投入堂を目指す行場道は実は「六根清浄の道」!

「目・耳・鼻・舌・身・意=(六根)」を研ぎ澄ませ!

本堂の裏の宿入橋(しくいりばし)を渡ると、「忌穢(きえ)不浄輩禁登山」。「穢(けが)れをはばかり、不浄の輩(やから)が山に登ることを禁ずる」の意です。
背後にそびえる三徳山は、花崗岩の上に凝灰角礫岩層と三徳山安山岩が覆うという地質。
中腹の凝灰岩は比較的柔らかく、上部の安山岩は硬いので、その境界部には断崖や岩窟が発達します。
その急な北斜面の地形を巧みに利用して、文殊堂(もんじゅどう)、地蔵堂(じぞうどう)、納経堂(のうきょうどう)、投入堂(なげいれどう)などが建てられているのです。

宿入橋から山上の投入堂への道が行者道で、1000年以上にわたって行者たちは修行のために三徳山の山上へと分け入ったのです。
千数百年変わらぬカズラ坂やブナ林の「願掛けの石段」、「馬の背・牛の背」を這いつくばって登り、文殊堂、地蔵堂など多くの行場を経た後に、眼前に断崖絶壁の岩窟に建つ投入堂が現れるという山内の諸堂もダイナミックな配置がなされています。
まさに、「六根清浄」の全てを清める修行の道ーなのです。

(1)「鼻」を鋭敏にする=三佛寺本堂

行者道の起点(本堂の裏に入口である宿入橋を設置)で、「六根清浄」 の「鼻」にあたる場所。出発前に本堂(本尊)に参詣し、線香(せんこう)を備え、意識を集中させ、修験道では、「神木」とされる石楠花(しゃくなげ)の芳香に包まれ、投入堂への参拝が始まります。この本堂で、香を鼻で嗅いで鼻界を確認します。
江戸時代後期の建築で、鳥取県の保護文化財に指定。

本尊を安置する本堂に参詣し、香を焚いて「鼻界」を確認

本尊を安置する本堂に参詣し、香を焚いて「鼻界」を確認

(2)「身」を鍛える=文殊堂

行者道のカズラ坂を木の根を頼ってよじ登ると、難所のクサリ坂の行場。身体を使い、一心不乱に登りますが、六感を研ぎ澄ませて、必死にクサリ坂を登りきると文殊堂。文殊堂から望む日本海、大山の姿は参拝者の心を清らかにします。触って得られる感触や思いのことを身界(しんかい)と呼びますが、難行苦行の登拝の道は、身界のチェックになっています。
室町時代後期の建築で国の重要文化財に指定。

クサリ坂から見上げる文殊堂。画面左下にチラリとクサリ坂が見える

クサリ坂から見上げる文殊堂。画面左下にチラリとクサリ坂が見える

クサリ坂を登りきると文殊堂。背後から眺めるとこんな感じ

クサリ坂を登りきると文殊堂。背後から眺めるとこんな感じ

(3)「耳」を研ぎ澄ます=鐘楼堂

投入堂参拝前の儀式として参詣者は鐘を撞き、心を落ち着かせる場所として欠かせません。毎年、大晦日には「日本一危険な除夜の鐘」が寺の関係者によって執り行なわれています。耳が声(しょう)を捉える耳界(じかい)を会得します。
建築方法は今も謎ですが、鎌倉時代の部材を残す部分もあって鳥取県の保護文化財に指定。

上空から眺める行場の道。地蔵堂から馬の背・牛の背と続く

上空から眺める行場の道。地蔵堂から馬の背・牛の背と続く

(4)「目」を開く=投入堂

「六根清浄」の目の核となる建物。伝承では開山の建築方法は今も謎の断崖絶壁に建つ三徳山のシンボルです。信仰の象徴である蔵王権現像を祀り、「六根清浄」が満願成就する最終到達地。あまりにも奇想天外な建築方法に、目を研ぎ澄ませるばかりか、目からウロコ、あるいは、目を見張る・・・、ともかくスゴイ建物です。まさに我が目で眼界(げんかい=眼で認識する精神世界)を体感することができるでしょう。
平安時代後期の建立で国宝。国宝指定名称は「三仏寺奥院(投入堂)」ですが、以前は蔵王殿と呼ばれていました。

国宝に指定される投入堂

国宝に指定される投入堂

三佛寺国宝「投入堂」への最後のよじ登り。まさに修行!

三佛寺国宝「投入堂」への最後のよじ登り。まさに修行!

(5)「意」を強くする=三徳山火渡り神事

三佛寺の秋季法要(『秋会式(炎の祭典)』)で執り行なわれる火渡り神事。国宝投入堂参拝が叶わぬ者でも、護摩壇を焼き尽くした浄火の上を素足で歩くことで祈りが届くとされています。荒行を経験することで、煩悩に惑わされない強い心を持つことができます。心が感じる世界(意識界)に導きます。
三徳山三佛寺『秋会式(炎の祭典)』

秋に行なわれる『炎の祭典』の火渡り神事

秋に行なわれる『炎の祭典』の火渡り神事

(6)「舌」を磨く=精進料理と三徳豆腐

門前や山内で供される料理を食することで、参拝前に体の中を清らかにし参拝の始まりを予感させます。舌が認識した味、つまりは味覚を研ぎ澄ませることも重要です。舌を鋭敏にして感じる思い、それが舌界(ぜつかい)です。木下謙次郎的にいえば「美味求真」。
明治24年創業の「大西豆腐店」の三徳豆腐は、現在は小売はなく、卸売のみ(受注生産)。宿坊・茶店で予約をすれば味わえます。門前の茶店「みとく苑」、宿坊輪光院、宿坊正善院、宿坊皆成院などで味わうことができます。

鳥取県内産大豆(サチユタカ)と三徳山の湧水で手作りする「三徳豆腐」

鳥取県内産大豆(サチユタカ)と三徳山の湧水で手作りする「三徳豆腐」

取材・画像協力/鳥取県・鳥取県東京事務所
三朝町教育委員会社会教育課の「日本遺産」申請資料などを参考にしています

投入堂へは入山禁止
2016年10月21日に発生した鳥取県中部地震の影響で、文殊堂近くの岩盤に亀裂が入っているため、本堂以奥の道は通行禁止となっています。そのため、日本一危ない除夜の鐘も中止です。現在、迂回路の設定などが検討されています。詳しくは三徳山三佛寺の公式HPをご覧ください。

三徳山三佛寺 DATA

名称 三徳山三佛寺/みとくさんさんぶつじ
所在地 鳥取県東伯郡三朝町三徳1010
拝観時間 8:00~15:00
休業日 無休
料金 入山料大人400円、小・中学生200円、投入堂参拝は大人200円、小・中学生100円
電車・バスで JR倉吉駅から日ノ丸バスで33分、三徳山参道入口下車
ドライブで 米子自動車道湯原ICから55分。または、中国自動車道院庄ICから1時間5分
駐車場 80台/無料
問い合わせ TEL:0858-43-2666
公式HP http://www.mitokusan.jp/

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ABOUTこの記事をかいた人

酒井正人

ラジオ・テレビレジャー記者会会員/旅ソムリエ。 旅の手帖編集部を経て、まっぷるマガジン地域版の立ち上げ、編集。昭文社ガイドブックのシリーズ企画立案、編集を行なう。その後、ソフトバンクでウエブと連動の旅行雑誌等を制作、出版。愛知万博公式ガイドブックを制作。以降、旅のウエブ、宿泊サイトにコンテンツ提供、カーナビ、ポータルサイトなどマルチメディアの編集に移行。